8月のモバイル回線

携帯4社の通信品質を科学的に比較
2025年8月度モバイル回線品質調査レポートを公開

2025年9月11日

株式会社Spelldata(東京都千代田区、代表取締役:竹洞 陽一郎)は、2025年8月に全国6都市(札幌・新潟・東京・名古屋・大阪・福岡)で実施した、携帯4社(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル)のモバイル回線品質比較レポートを公開しました。
本調査は、統計的品質管理と最新のSynthetic Monitoring技術を活用した科学的な分析により、従来のスループット偏重評価から脱却し、応答速度(Ping)、パケットロス、ジッターなど多角的な指標で品質を評価。
今月は福岡でのソフトバンクの測定値異常と、各エリアでの大幅な品質変動が特徴的でした。

レポートはWebサイトから無料でダウンロードでき、地域別の詳細データも提供。
通信品質向上や業界全体の発展に寄与する内容で、携帯会社関係者はもちろん、報道関係者や一般ユーザーにもご活用いただけます。

「2025年8月度モバイル回線品質比較レポート」

通信障害報告基準の厳格化と予兆検知の重要性

9月1日に総務省が通信障害などが起きたときに事業者に求める事故報告について基準を変更することが発表されました。
携帯電話などのデータ通信において「影響利用者数100万人以上」だった基準が「10万人以上」に見直され、電子メールなどのインターネット関連サービスでは「継続時間12時間以上」が「2時間以上」へと大幅に短縮されます。

この基準変更は、通信品質の重要性が従来以上に高まっていることを示しており、事業者には早期の障害検知と迅速な対応がより強く求められることになります。
今回の当社調査においても、ソフトバンクの福岡エリアで8月18日から継続的な測定値異常が観測されましたが、その予兆は8月12日から17日にかけて散発的に現れていました。

当社が提供するエンドポイント側からの定常的な計測・監視サービスは、こうした障害の予兆をリアルタイムに検知し、総務省の新基準に対応した迅速な対策を可能にします。
Layer3からLayer7までを包括的にカバーし、HTTPSやSMTP、POP/IMAPなどのプロトコルも含めた多角的な監視により、真のボトルネックを特定できます。

主な結果と特徴

今回の調査は、2025年8月1日から31日までの1か月間、全国6か所(札幌・新潟・東京・名古屋・大阪・福岡)の計測センターにて、携帯4社(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル)の通信品質を計測・分析したものです。
計測には、海外で30年以上の実績を持ち、大手通信会社でも採用されている最新のSynthetic Monitoring(合成監視)技術を活用しました。
これにより、15分ごとにランダムなタイミングで回線の応答速度(Ping)、ホップ数、パケットロス率など、多角的な指標を取得しています。

総合評価とランキング

調査の総合評価では、auが引き続き全地域で安定した品質を維持し1位の地位を保持しました。
ランキングは以下の通りです。

特にauは、総務省基準(レイテンシ70ms以下、ジッター20ms以下、パケットロス0.5%以下)を18項目中15項目で達成し、安定した総合力を示しました。

地域別の特徴と前月からの変化

北日本エリア(札幌・新潟)
札幌ではauとソフトバンクが改善を示した一方、楽天とドコモは悪化傾向を示しました。
新潟では楽天モバイルが大幅改善(RTT 22.5%、ジッター 29.5%向上)を記録し、品質向上の取り組みが結果に表れています。
関東・中部エリア(東京・名古屋)
東京ではauが大幅改善(RTT 21.7%向上)を記録し、首都圏での優位性を確立。
楽天モバイルもパケットロス83.3%改善と好調でした。名古屋ではauがパケットロス問題を完全解決する一方、楽天モバイルが全指標で60%以上の大幅悪化を記録し、地域格差が顕著になりました。
関西・九州エリア(大阪・福岡)
大阪では各社が異なる強みで競争する構図が継続。
福岡では楽天モバイルが大幅改善(RTT 59.5%、ジッター 89.7%向上)でトップ水準に到達した一方、ソフトバンクで深刻な測定値異常が発生しました。

注目すべき結果

ソフトバンクの福岡における測定値異常
8月18日13時から継続的にパケットロスの大幅増加が観測され、RTT 103.5%悪化、ジッター 1634%悪化、パケットロス 1895%悪化を記録。
予兆は8月12日から17日にかけて散発的に現れており、予兆検知の重要性を実証する結果となりました。
福岡のソフトバンクにおける2025年8月の測定値変化
福岡ソフトバンクにおける測定値の時系列変化(基準値を大幅に超過する期間を記録)
楽天モバイルの地域格差拡大
福岡で大幅改善を記録する一方、名古屋では全指標で60%以上の悪化。地域別の品質管理体制に課題があることが示唆されます。
ドコモの構造的課題
ジッター基準を全6都市で未達成し、総務省基準達成率27.8%に留まりました。特に基地局よりもバックボーンネットワークに起因する問題が顕著です。
auの安定性確立
東京での大幅改善や名古屋でのパケットロス完全解決など、継続的な品質向上により総合1位を維持しました。

技術的示唆と今後の課題

今月の測定結果は、遅延の主要因が基地局よりもキャリア内部ネットワーク(バックホールやルーティング)に集中する傾向を明確に示しています。特に福岡でのソフトバンクの事例は、内部ネットワークの問題が品質に与える影響の大きさを実証しており、以下の技術的施策が急務となります。

包括的なエンドポイント監視の導入
Layer3からLayer7まで、HTTPSやSMTP、POP/IMAPなどのプロトコルを含む定常的な計測・監視により、障害の予兆をリアルタイムに検知
内部ルーティングの最適化
遅延集中区間の特定と経路最適化による品質向上
TCP実装の現代化
SACK有効化とECN運用によるロス起因の遅延抑制
キュー管理の改善
AQM導入によるジッター安定化

総務省の新基準では、迅速な報告と詳細な事故報告が求められるため、これらの技術的対策と併せて、継続的な品質監視体制の構築が不可欠です。

今後の展望と継続的な品質向上への取り組み

当社は、レポートを今後毎月発表していく予定です。
これにより、通信品質の長期的な傾向や各キャリアの改善状況を定点観測し、業界全体の品質向上を後押しします。

通信インフラの品質向上は、国民生活の利便性や産業の競争力強化に直結する社会的課題です。
総務省の事故報告基準厳格化により、事業者にはより高度な品質管理が求められる中、当社は引き続き、科学的かつ中立的な立場から、信頼性の高いデータを提供し、携帯会社はもちろん、自治体や研究機関、消費者の皆さまにも活用いただける情報基盤を提供します。

より詳細なリアルタイムの地域別数値データは、当社が日本代理店を務める CatchpointのSynthetic Monitoringサービスをご契約いただくことで入手可能です。
提供可能なデータ例は以下の通りです。

これらのデータは、従来の調査手法では得られない詳細かつ即時性の高い情報であり、ネットワーク品質改善や障害原因の特定に直接役立ちます。
さらに、取得したデータを基にアラートを設定することで、障害や遅延の兆候をリアルタイムに検知し、総務省の新基準に対応した迅速な対応が可能となります。

レポート概要

レポート名
2025年8月度モバイル回線品質比較レポート
価格
無料
公開場所
https://speeddata.jp/report/mobile_quality_2025-08.html
地域別データ
札幌・新潟・東京・名古屋・大阪・福岡
ダウンロード形式
WebサイトよりExcel形式で入手可能

株式会社Spelldataについて

Spelldataは、デジタルサービスのスピードと信頼性の専門企業です。
お客様のWebサイト配信やメール配信の高速かつ安定運用によってビジネスを加速できるよう、統計的品質管理の手法を用いて、お客様のデジタルサービスのスピードと信頼性向上を支援しています。
「社会に堅牢なファンデーションを培う」をビジョンとし、その達成のために「統計的品質管理を日本のIT業界に普及する」ことをミッションとして掲げています。

社名
株式会社Spelldata
所在地
〒100-0004 東京都千代田区大手町一丁目7番2号 東京サンケイビル27階
代表者
代表取締役 竹洞 陽一郎
設立
2000年10月
事業内容
デジタルサービスの性能・信頼性・セキュリティに関する計測・分析・改善
URL
https://spelldata.co.jp

本件に関するお問い合わせ先

株式会社Spelldata 広報担当
TEL:03-3242-3150
Email:press_release@spelldata.co.jp

※以上のメールアドレスは報道機関向けに公開されており、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」第3条3項の規定に基づき、広告宣伝のメールは拒絶する旨をここに明示します。
この法令の違反者には「行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下の罰金」が課せられます。

※記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。