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意匠法改正によるWebデザインの保護

2019年5月16日
著者: 将星国際特許事務所 所長
弁理士 渡部 仁

今回は、Spelldataの顧問弁理士で、将星国際特許事務所の所長である渡部 仁先生に、2019年3月1日に閣議決定され、来年4月に施行と目されている「特許法等の一部を改正する法律案」で改正される意匠法によって、Webデザインの保護がどのように変わるのか、専門家の立場から解説の記事を書いて頂きました。

Webデザインの法律的保護

集客効果の高いWebページのデザイン(以下「Webデザイン」)を作成しても、第三者にそのWebデザインを模倣されることで、Webページが販促ツールとして機能しなくなることがあります。
さらには、悪意のある模倣により事業者の信用が毀損され、事業の継続が困難となるケースも生じ得ます。
Webデザインの模倣盗用に対し、どのような法的保護を受けることができるのか知っておくことが重要です。

著作権による保護

Webデザインの保護について、まず考えられるのが著作権による保護です。
著作権とは、人が創作活動をした場合に、その創作物について自然発生的に生ずる権利であり、第三者による創作物の模倣や無断使用を制限することができます。
権利期間は公表後70年と長期の保護が受けられ、権利発生について特段の手続は不要です。

Webページは写真や文章等様々な創作物の集合体であり、ページ上から写真や文章を無断使用された場合などは著作権侵害を問うことができます。
一方で、コンテンツの配列や配色に著作権が発生するかという点については、一般的に否定的に考えられています。
Webページ全体のデザインを著作権で保護することは難しいということです。

また、著作権は対象となる創作物の「模倣」についてのみ効果があり、たまたま類似してしまった創作物に対しては権利が及びません。
そして、第三者が「模倣」をしたことの立証責任は権利者側にあるなど、Webデザインの包括的保護にあたり、必ずしも使いやすい権利とはいえない面があります。

意匠権による保護

そこで、次に意匠権によるWebデザインの保護を検討します。
意匠権は、基本的に市場で販売され流通する「製品のデザイン」について認められるものであるため、従来Webデザインについて意匠登録は認められませんでした。
しかし、2019年の意匠法改正によりWebデザインについても意匠登録が認められることになる見通しです。

Webデザインについて意匠登録が認められることとなれば、Webデザインの直接的な保護について大変有効な選択肢となり得ます。
以下において、意匠権による保護についてもう少し掘り下げた説明を行います。

Webデザインの意匠権による保護

現行の意匠法上、意匠とは「製品のデザイン」と定義されており、「製品のデザイン」すなわち自動車のデザイン、携帯電話のデザイン、ペットボトルのデザイン等、製品の存在が前提となっていました。
したがって、販売され流通される製品自体のデザインとはいえないWebデザインは意匠とはいえず、意匠法上保護されませんでした。

しかし諸外国をみると、意匠登録の対象について我が国ほど厳格に製品との関係を求める国は少なく、さらに近年のIoT等の新技術の進展により、Webデザインを含む画像デザインについて、製品との関係を固持することが実態に合わなくなってきました。
そこで、この度Webデザイン等の画像デザインの保護を拡充する意匠法改正が行われる運びとなりました。
コンテンツごとの著作権により間接的にWebデザインを保護していたことに比べ、表示される画面デザインそのものに独占権たる意匠権が認められることとなり、Webデザイン保護の観点からは利益の大きい法改正となります。

また、侵害の観点からみると著作権の場合は「模倣」が前提になっているのに対し、意匠権侵害は、偶然類似のデザインとなった場合についても権利行使が可能であるという点においても大変有効です。
すなわち、現実の侵害に際し、著作権では「真似をした結果、似ている」ということを立証しなければならないのに対し、意匠権ならば、単に「似ている」ということを立証すれば良く、これは実際の権利行使にあたり非常に大きな差となって現れます。

今回予定されている法改正は、伝統的な意匠の考え方を変革する転換点になるといわれています。
意匠法は今後改正を重ね、より社会実情に即した制度への再生が期待されています。
従来、我が国における意匠制度は制約が多く使い難い制度であったため、特許出願や商標登録出願に比べ出願の件数も多くありませんでしたが、制度の利便性が向上すれば、おのずと出願件数も増加するはずです。

Webデザインについていえば現時点では先願が存在しない状況ですので、改正法施行のタイミングに合わせた意匠登録出願は、戦略的に価値の高い権利を取得する絶好の機会といえるでしょう。

意匠権の保護に関する留意点

施行日について

上述した画面デザインの保護は、法改正が施行された後の意匠登録出願について適用されます。
改正法は、改正案が国会で可決され法案成立の後1年以内に施行されますが、2019年5月10日現在においては、施行がいつになるのかは明らかになっていません。
最近の改正を鑑みると、2020年4月頃の施行が予想されます。

登録要件について

意匠権は強力な権利であるため、登録のための要件が厳格に法定されています。
特に重要な点として、出願の前に公開となった意匠については意匠登録が認められない取扱いがされます。
意匠登録を検討されている場合には、出願前にWebデザインを公開しないようご注意ください。

意匠権の効力について

意匠権は、登録意匠と、それに類似する意匠を独占的に実施できる効力を有します。
すなわち、意匠登録されたWebデザインに類似するデザインを用いている第三者がいた場合に、その第三者に対しデザインの使用を中止させることができ、またそれにより損害が生じていた場合には損害賠償を請求することもできます。

保護期間について

意匠権の保護期間は設定登録から20年ですが、今回の法改正により25年に延長される見通しです。
意匠権の存続期間は旧来10年でしたが、昭和34年改正により15年、平成19年改正により20年となり、さらに今回の改正で25年に延長されます。
意匠権の保護をより手厚くし、利便性の高い制度への改善を図る一環といえます。

登録までの費用について

意匠登録について、特許庁に支払う手数料として、出願の際に出願手数料として16,000円、設定登録料として8,500円を納付する必要があります。
また、意匠権を維持するために、毎年8,500円の年金納付が必要です。
先願意匠の調査や出願書類の作成は、専門家である弁理士に手続を依頼するのが合理的です。

弁理士報酬に規定の金額はありませんが、おおよそ登録まで20万円程度のようです。

追記

特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)は、本日、2019年5月17日付で交付となりました。
一年以内に施行となります。
従って、どんなに遅くても、2020年5月17日までには施行となります。

執筆者プロフィール

資格

所属

公的な役職(2018年5月現在)


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