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ベテランの教え

日本のWeb制作業界の課題はこれだ!
第1回

2017年11月25日
著者: ベテランWeb担当者 H

※この記事は、匿名を条件に、現在、大手メディアサイトでWeb担当者を務めていらっしゃる方から寄稿頂いた記事です。

Webのビジネス黎明期から関わってきた視点

私は、パソコン通信のころからPCを使ってきた、いわゆる「おやじ系Webコンサル」だ。
Webのビジネス黎明期から、この業界で仕事をしてきた。

ITやWebの業界というと若者のイメージが強いが、PCの本格普及時に若者だった我々世代は、今や立派におやじ世代。
同世代からは定年退職の案内が来ることもめずらしくない。

最初に企業ホームページ(当時はWebサイトという用語もあまり使われなかった)を立ち上げたのは、概ね、我々世代ではないだろうか。

という訳で、長年やってきていて、今さら思うことが多々ある。
たとえば、最近感心したのは、こちらの記事「アメリカでWeb制作会社が存在できない5つの理由」
もう4年ほど前の記事になるが、いまだに注目すべきとても本質的な課題に触れていると考える。

この記事でbtraxのBrandon氏は、理由として、以下の要因をあげている。

  1. 大企業は内製が主流
  2. フリーランサー活用が進んでいる
  3. 中南米や東南アジアなどコストの安い英語圏に外注しやすい
  4. 優秀な人材の引き抜き
  5. 買収されやすい

企業や雇用文化の違いに由来する部分も多いが、ここで特に注目したいのは、1の内製化や3の海外外注などに共通した背景である。
一般的な制作や運用、マーケティング、システム開発などが、特殊なものを除いてコモディティ化しているという点である。
これは、平たくいうと「専門会社に依頼する程の特殊なノウハウではなくなっている」ということ。

かつて、PCの普及機には日本でもOA会社というのが多く存在して、企業のPCやソフト購入、設置、サポート(故障や使い方の問合せ)などを専門に行っていたが、今では、そのようなサービスを単体で外注する会社はほとんど消え失せた。
中小企業でも、総務部などに詳しい社員がいて対応するか、システム系の社員が片手間に対応するのが多いのではないだろうか。
(大手企業では、セキュリティやシンクライアント、社内ネットワーク(VPNや社内アプリ)などにより多くのリソースを充てるのが一般的)

世界でコモディティ化するWeb

前置きが長くなったが、日本ではまだまだ対応に四苦八苦していたり、専門会社(Web制作会社含む)や総合広告代理店、ネット専業広告代理店に外注する。
そのような業務の多くが、アメリカではそれほど試行錯誤を要する業務ではなくなり、より成果を上げるための業務に傾注できる状況になっているという事である。

これは、日本だけではなく、意外なことにヨーロッパも似たような状況があるようだ。
我々は、大雑把に欧米といってしまうが、あまり紹介されることが少ないものの、北欧や南欧などのIT業界関係者と話をすると、彼らは、(日本から見て)実にユニークな取り組みをしていたりする。
そのまま英語圏ではなく、先進国としてのプライドや開発能力を持ち独自の文化を持つというのが共通点なのかもしれない。

言葉や文化の違いが元で、世界基準からワンテンポズレるというのがWeb制作業界では顕著になっており、そしてそれが良い方向にはなっていないというのが、私の分析である。

そもそも、PCもインターネットもWWWも、それを作ったというか規格化したのはアメリカ人である。
その後、主導してきたのもアメリカだ。

日本は工業開発力が高かったため、90年代初頭にNECが国産CPUを普及させたり、Windows以前には、シャープのX68000シリーズなど国産で独自のOSやPCを開発・販売していた。
ハードのみならず、基本的な業務ソフトウエアであるワープロソフトは「一太郎」という日本語に最適化したソフトが一世を風靡した時代もある。

しかし、これらはいずれも、後にアメリカ製に席巻された。
CPUはIntelやAMD、OS(事務用・個人用)はWindowsかMac、さらには、日本が最後まで頑張ったモバイル機器も、ガラケーは少なくなり、iPhoneかAndroidのスマホに置き換わった。

工業製品のみならず、検索やSNSもGoogle(YouTube含む)、Twitter、Facebook、Instagramといったアメリカ勢が強く、国産で大きく頑張っているのはLINEくらいではなかろうか。
猛烈に普及しつつあるシェアリングエコノミーもUber、Airbnbはアメリカ勢。
周辺機器・部品、製造・組立を除き、日本勢、ヨーロッパ勢以外にも、イスラエル、インド、韓国などは国産の規格やサービスをリリースさせるが、ワールドでアメリカ勢に打ち勝った事例は少ない。
(AdBlockがドイツ発祥という話はあるが。中国は政府がコントロールしていて特殊なので除く。)

「生み出した」国が優位になる

歴史学者的な目線でいうと、誕生国優位が続いているといえようか。
スポーツに例えると、「ウインブルドン現象」といわれるような誕生国優位が消滅したジャンルもあるが、基本的には誕生国優位(あるいは強い)なジャンルが多い。
ノルディックスキーは北欧が強いし、日本でも柔道でメダルが少ないと大騒ぎになる。
他にも、テコンドー=韓国、野球・バスケットボール=アメリカなど。

ノルディックスキーと柔道は、誕生国優位の要因ともいえるエピソードがある。
かつて冬季五輪で日本勢がジャンプや複合で大活躍した時期があった。
ところが、その後何が起こったかというと、誕生国やその周辺国が中心となってルール改正が行われ、日本は以前ほど活躍できなくなった。

彼らから見ると、体格が小さい選手が有利になることはけしからん、という論理で、スキーの長さが身長との兼ね合いで制限されるルールが追加された訳だ。
柔道においても、技がかかりやすいように道着やルール改正が日本主導で行われている。
技よりも組手争いやパワーで勝負が決まるのは柔道の本質に反している、という論理だ。

Webにおいては、少しわかり難いが、アメリカの状況をよく知る専門家によると、基本的なWebの規格を策定するW3Cのレギュレーションは、国連の安全保障理事会のようなもので、Googleが主導し、Appleがしばしば反対する、というような構図があるらしい。

より具体的な事例は、次回以降とするが、大雑把に言って「Web制作業界は、柔道のようなもので誕生国優位の状況。
アメリカに逆らって日本人だけで議論するのではなく、アメリカの状況を知ってそれに乗っかっていくべき」というのが、最近の私の持論である。

執筆者プロフィール

2001年より大手メディアサイトの改善や新規サイトの立ち上げなどに携わってきた。
キャリアの前半はアナログ時代の広告業界。
自称、失敗だらけの反面コンサル。
57歳、趣味多数。

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