株式会社Spelldata

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ギア比の力

ミツエーリンクスさんとの協業についての想い

2016年8月18日
著者: 竹洞 陽一郎

昨日、2016年8月17日、表示パフォーマンス改善について、株式会社ミツエーリンクスさんと協業することをプレスリリースにして発表しました。
この協業についての個人的な想いを、ミツエーリンクスの社長である木達さんがブログに書かれていたので、和歌の返歌みたいに、私も今回の協業についての想いを書きます。

Webの品質が低い日本

残念ながら、現状、日本国内のWebの品質は、世界のそれに比べると低いです。
それは、私達のこの数年の調査に基づいて述べています。また、日本のWebの品質の低さは海外のWeb業界でも認知されていて、時折話題になります。
この話題になると、「Webの品質って何さ?」という話になるので、言葉の定義をまずは明確にしておきます。

Wikipeidaでは、以下のように品質の定義について書いてあります。

JIS Z 8101では、1999年まで、品質を「品物又はサービスが、使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体」と定義していた。1999年の改訂の際、この定義は削除された。
ISO 9000では、「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されている。
品質工学では、「品質とは、品物が出荷後、社会に与える損失である。ただし、機能そのものによる損失は除く」と定義されている。

Wikiの英語での品質(Quality)では、以下のように記載されています。

In business, engineering and manufacturing, quality has a pragmatic interpretation as the non-inferiority or superiority of something; it is also defined as fitness for purpose.
Quality is a perceptual, conditional, and somewhat subjective attribute and may be understood differently by different people.
Consumers may focus on the specification quality of a product/service, or how it compares to competitors in the marketplace.
Producers might measure the conformance quality, or degree to which the product/service was produced correctly.

Support personnel may measure quality in the degree that a product is reliable, maintainable, or sustainable.
A quality item (an item that has quality) has the ability to perform satisfactorily in service and is suitable for its intended purpose.

(ビジネス、工学、製造において、品質は実際的解釈としては、何かの非劣性、もしくは優位性である。また目的に対する適切性とも定義される。
品質は知覚的、状態的、やや主観的属性であり、人によって理解が異なる。
消費者は製品やサービスの仕様品質や、市場での競合製品をどのように比較するかの点で注目する。
生産者は適合性要件や、製品やサービスが正確につくられたかの度合いを測るであろう。

サポート人員は、製品の信頼性、メンテナンス性、持続性の尺度で品質を測るだろう。
高品質のモノ(品質を持つモノ)は、サービス面で満足度が高いものを提供し、意図した目的のために適した能力を持つ。)

品質というのは、上記のとおり、提供者と利用者で見る視点が異なります。
しかし、提供者・利用者、双方に共通しているのは、目的に如何に適合しているか、という観点でです。
では、Webの目的は何でしょうか?

情報を伝えるためのWeb

Webは、今は、以下のような使われ方をしています。

いずれの使い方であっても、本質的には、「情報」を扱い、「情報」を伝えるためにWebはあります。
しかし、人間は、タンジブル(手に触れることのできる)なモノを扱う場合と、インタンジブル(手に触れられない)なモノを扱う場合では、意識に差が生じるようです。

行動経済学者のダン・エアリーは、著書「予想どおりに不合理」の中で、物理的なお金を盗むことに人は罪悪感を感じるのに、電子的な貨幣については罪悪感が薄れるという事を述べています。
例えば、下の写真を見て下さい。

濡れた雑誌

このように濡れてページがくっついたり、ゴワゴワしている会社案内、パンフレット、商品カタログなどをお客様に渡しますか?
「そんな、失礼なことはしない!」と仰るでしょう。
手に触れることのできる会社案内、パンフレット、商品カタログなどについては、不快な、ちゃんとしていないものをお客様に渡すのをためらうのに、どういうわけか、手に触れることのできないWebには、鈍感になってしまうのです。

どんなに素晴らしい商品やサービスを提供していて、素晴らしい会社であったとしても、お客様は濡れた会社案内やカタログを見たくないです。
同様に、閲覧するのが快適ではないWebサイトについても、お客様は見たいとは思っていないのです。
皆さんだって、遅いWebサイトにはイライラされるでしょう?

押し寄せてくる海外勢に立ち向かい、そして海外へ進出するために

2016年7月24日に日経新聞に掲載された「もがく楽天、じわり客離れ 『支持率』アマゾンに軍配」(日経MJ消費者調査)という記事があります。
検索の早さやサイトのシンプルなデザインに評価が集まり、Amazonの方が、消費者に評価されているという内容でした。
この内容に、納得されている方も多いかと思います。

楽天は、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアへと進出しましたが、東南アジアについては撤退を余儀なくされました。
海外の口コミサイトConsumer Affairsを見てみると、サービス対応の悪さや、エラーの多さ、表示速度の遅さが指摘されています。

また、米国でのオンラインショッピングサイトのスマートフォンサイトの表示速度についての比較データでも、Rakutenは16秒と、最も遅い結果となっています。

米国オンラインショッピングスマートフォンサイト速度比較

これを「対岸の火事」と、傍観していられるでしょうか?
とある、米国企業の米国人の日本支社長と話したときに、こういう話が出ました。
「日本の不動産会社は、米国の企業が日本進出する際に、自分達のビルに入居して欲しいってアピールしてくる。でも、彼らのWebサイトときたら、ニューヨークで何秒で表示されるか知ってるかい?そんな遅いサイトの会社なんて、誰も見ないさ。日本でのブランド力だけで勝負するのかい?」

製造業中心からデジタル産業中心へと動く世界市場での品質の重要性

1990年代までは、世界の経済は製造業を中心として動いていました。
しかし、2000年以降、経済活動の中心軸は、デジタル産業へと移り、そして重みを増してきています。
デジタル産業以外であっても、Webサイトを代表として、IT技術が、会社の神経網として、また商売の表看板として重要な役割を担っています。

この流れは、日本とて、例外ではありません。
私達は、Webを通して日本の顧客、世界の顧客へとアピールし、同様にWebを通して攻め寄せてくる海外勢に立ち向かわなくてはならないのです。
だからこそ、私達は、Webの品質を向上させなくてはいけないのです。

私達、日本人は「おもてなしの心」を大事にし、そして、その「おもてなしの質」の高さを誇ってきました。
その神髄は、茶道の「利休七則」に見ることができます。

茶道、日本のおもてなしの心
茶は服のよきように
相手が飲みやすいように、適度な温度と量にする
炭は湯の沸くように
段取りでは、要となるポイントをおさえる
夏は涼しく冬暖かに
心地よさをつくる
花は野にあるように
自然に「あるよう」にする
刻限は早めに
ゆとりを持ってことにあたる
降らずとも傘の用意
万人の憂いを想定して備える
相客に心せよ
その場に居合わせた人の全員が、心地よく過ごせるよう、気を配る

この「利休七則」に照らし合わせて、日本のWebサイトを眺めてみると、おもてなしとは程遠いことがよくわかると思います。
そして、現在の日本のWebサイトのデザインの問題点については、森博嗣さんの名言がぴったりと当て嵌まります。

デザインの語源は「削る」という意味である。
不要なものを消して、最適なものを選ぶことだ。
けっして「足して飾る」ことではない。

森博嗣(小説家、同人作家、工学博士。元名古屋大学助教授)

Spelldataがミツエーリンクスさんと協業する意味

私達、Spelldataは、Webの制作会社ではありません。
あくまでも、Webサイトの配信品質・情報品質についてのデータ計測・分析・改善の企業です。
Webサイトの品質を改善するためには、実際に作業をしなくてはいけないわけですが、私達は小さな企業なので、全ての案件や要望に応えることができません。

ミツエーリンクスさんは、長年、技術品質、プロセス品質、サービス品質に注力され、アクセシビリティ/ユーザビリティの向上、アクセス解析に至るまで、様々なサービスを包括的に提供し、Webの品質向上や品質の重要性を市場に訴え続けてこられました。
しかし、表示パフォーマンスについては、メニューをお持ちではありませんでした。

この部分を私達が担うことにより、ミツエーリンクスさんのWebの品質向上サービスの輪が完成します。
そして、私達は強力なパワーの小さな歯車(ピニオン)として、大きな歯車(アイドラ)であるミツエーリンクスさんの力を借りて、ギア比を活用するように、表示パフォーマンスの重要性について、市場の認知を広めることが出来ます。
そして、分析業務に専念することで、更に、この分野での専門能力を高めていくことが可能となります。まさに、ぴったりな補完関係なのです。

また、私自身は、配信品質や情報品質を長年やってきたので、品質に妥協は出来ないです。
ミツエーリンクスの木達さんも、Webの品質を追求されており、お互いの品質に対する想いが合致して、今回の協業と相成りました。

明示化されない非機能要件を数値によって見える化

WebパフォーマンスやWebページの表示速度について、講演する機会が多いのですが、その後の懇親会などで、Webデザイナーの人達に「Webページの表示速度についてどうですか?」と訊くと、「お客様から言われないです」という答えが返ってきます。
木達さんがブログで、Hidden Expectationsについて書かれていましたが、表示速度は、お客様からすれば「速くて当然」のことだと思います。
日本人は、速度が大好きじゃないですか。携帯網の通信速度など、TVや新聞のニュースになり、総務省が速度の測り方研究会を主宰するくらいです。

もし、お客様が表示速度について、本当に求めていないとしても、Web制作サイドはプロとして、表示速度の重要性、繋がりやすさの重要性について、お客様に伝えていかなくてはいけない立場です。
表示速度や、繋がりやすさは、専門用語では、「非機能要件」といいます。
日本のWebの競争力を向上させるということは、この明示化されない非機能要件を、計測数値によって見える化して、明示的要求へと変えることだと考えています。

木達さんをはじめとするミツエーリンクスの皆さんの力を借りて、日本におけるWebの品質の普及の一助になれたらという想いでいます。


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